日本に分布するネズミはネズミ亜科とハタネズミ亜科にわけられ、27種類のネズミが生息しています。ほとんどのものは農耕地、山林などの野外で生活をしていますが、これらのうち、家屋やその周辺に棲みつき、人間の生活環境で行動するネズミ、いわゆる住家性ネズミはドブネズミ、クマネズミ、ハツカネズミの3種類です。
ドブネズミ
- ドブネズミの生態
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ドブネズミは日本全土に広く分布し、一般家庭やビル内で一番多くみられる種類です。性格は獰猛で何でも食べる雑食性、土の中に巣穴を作り生活しますが、建物内では低い階層や下水溝に棲息するものが多くみられます。
運動能力は抜群で遊泳は800m、短距離なら潜水もできます。跳躍は水平に約1.2m、垂直に約1m跳ぶことができ、電線は水平でも垂直でも登れます。ドブネズミの妊娠期間は約1日、1回の産子数は平均6頭、年間の分娩回数は5~6回とみなされていて、単純計算で年間30匹以上の子を産みます。乳児は生後二週間で開眼し、歩行・採餌活動をはじめ、生後3ヶ月から生殖可能となり、これが2年ほど続き、平均寿命は約3年です。
- ドブネズミの被害
- 住家性ネズミからこうむる経済的被害は、極めて大きなものがあり、家屋、家具、什器、衣類、書籍などの破損、各種食料品の食害と汚染、電線の噛みちぎり〔火災原因〕、通信ケーブルの噛みちぎり〔交通機関の妨害〕など、近年では、一般家庭でもパソコンや電話線や配線をネズミに噛みちぎられる事例も増えています。農作物の被害も多くみられ、農業上の損害も極めて大きくなってきています。
さらにネズミ類の場合、人や家畜の伝染病(ペスト、発疹熱、発疹チフス、ツツガムシ病、サルモネラ症、レプトスピラ症など)を媒介しし、これらの病気の原因は寄生しているダニやノミであったり糞や尿であったりします。
ドブネズミの防除方法
- 建物内にネズミが侵入しないよう、割れ目、隙間、通路の封鎖する。
- 営巣材料や営巣場所を与えない。
- 残飯整理、食べ物くずをかたづけるなど、食べ物を管理する。まずはこの3つの環境的に予防していく方法が大切である。
ドブネズミの駆除方法
ズミ取りかご、ねずみ取り機、粘着トラップなどで捕獲する方法が有効である。
ただしラットサイン〔ネズミの通り道につけるあと〕のあるところや置き場所、仕掛け方で捕獲率に差が出る。
その他超音波などもあるが効果は期待できない。ネズミ類を駆除する手段のうちで、最も普及しているのは、殺鼠剤を利用する方法である。
クマネズミ
- クマネズミの生態
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本来は農・畜産環境に多い種類ですがが、近年では大都会のビル内で増加の傾向にあります。もともと食植性ではありますが、生息環境によって食性は異なります。建物内では比較的高い場所や壁面内部の隙間に生息し、登坂力に優れ、平面的な行動をとるドブネズミとは異なって、垂直的な行動をとります。
割れ目、あるいは荒壁などの足がかりがあれば垂直面でも登坂し、綱渡りは子のネズミの特技でもあります。 - クマネズミの被害
- 酪農・養鶏・養豚場などにおける家畜飼料、ならびに生産物の食害、大型百貨店、スーパーマーケットなどにおける食料品やその他商品の破損などが多く見られます。
この数年来、大都市の特定のビル内で、ワルファリン(抗血液凝固性殺そ剤)抵抗性のクマネズミが出現し、その駆除に手を焼いている状況です。
ハツカネズミ
- ハツカネズミの生態
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もともと農村環境に多い種類で、農耕地、とりわけ穀物倉庫における重要種です。近頃では、都会地のビル内や、近郊の中高層住宅にもかなりのものが棲息しています。活動性が比較的小さいので、あまり目立たないものの、かなりの被害があります。
本来、食植性で、穀物を主食としますが、棲息環境によって食性は異なり、雑食性のところもあります。住家性のものでは、ほとんどビルや建物の内部に営巣し、巣は建物のすき間を利用してつくりますが、そのほか机・ソファーなどの調度品の内部や、ときには植木鉢の中にも巣をつくることがあります。
跳躍力に優れ、垂直の壁面も登はんします。特にハツカネズミは8~9mmのすき間を出入りすることができます。