生態
トコジラミは小さな吸血性の昆虫で、人間や動物の血を吸って生きています。成虫は体長が約5mm程度で、扁平な楕円形をしており、色は赤褐色です。
成虫は約5mm程度ということは、ダニなどと違い、目視で確認することができるサイズではありますが、昼間は姿を現さず直接目につくことが少ないため、発見が困難です。
メスのトコジラミは1日に5〜6個の卵を産みます。これらの卵は約2週間で幼虫に成長し、さらに1〜2ヶ月で成虫になります。
成虫はおよそ3〜4ヶ月生きることができ、その間に幼虫も成虫もメスもオスも吸血します。メスは一生の間に200〜500個もの卵を産むため、トコジラミの数は急速に増加します。
トコジラミの生息場所
トコジラミは英語でBed Bug(ベッドバグ)と呼ばれていて、その名の通り特にベッド周辺を好む傾向にあります。マットレスの隙間、ベッドフレーム、ヘッドボードなど、人が長時間静止している場所の近くにいます。
ソファ、椅子の隙間、背もたれのクッション内部、引き出しの裏側など、家具の隠れた部分や、洋服のポケット、バッグの内側など、人の身の回りのアイテムにも侵入して潜んでいることもあります。
また、床と壁の隙間やカーペットの下、敷居の裂け目、壁紙の剥がれた部分、天井と壁の接合部、電気の配線を通る穴や裂け目など、建物の隙間にも生息します。
こんな症状や状況を見つけたらトコジラミがいるかも!?
トコジラミは昼間や夜、電気を付けている部屋には基本的に姿を現さないので、発見がされにくく、夜寝ている時に刺されて被害に気付くというのが一般的です。
トコジラミが寝具や家具などに残す小さな黒い点や血の斑点がある場合は、トコジラミが生息している可能性があります。これらはトコジラミが活動した後に残る排泄物(血の糞)や、吸血した際に滲み出た血の可能性が高いです。
このような状況が見られる場合は、トコジラミの存在を疑ってください。
被害
トコジラミに刺されると、人によって異なる反応が現れることがありますが、一般的には刺された部分に小さな赤い斑点ができ、周囲が腫れ上がります。これはトコジラミの唾液に含まれる抗凝固剤や麻酔成分による体の反応です。
また強烈なかゆみを伴い、数日間持続することがあります。何十匹もの蚊に一度に刺されてしまったような激しいかゆみ、と例える人もいます。
また、中には眠れないほどのかゆみで睡眠障害や精神的なストレスを感じる人もいる程です。
また、トコジラミの刺し傷に対して強いアレルギー反応を示すことがあり、発疹や腫れがより激しく現れる場合があります。刺された部分をかきすぎると、傷が深くなり、感染症を引き起こすリスクがあり、さらに治療が必要になることがあります。
もしトコジラミに刺されてしまったら
刺された場合は、まず冷水で患部を洗い、清潔に保つことが大切です。軽症であれば市販の虫刺され薬を使用し、様子をみても良いでしょう。
しかし、症状が良くならない場合や症状が重い場合、広範囲にわたる場合は、皮膚科を受診するようにしてください。
トコジラミの被害は、その症状に加えて、心理的な影響や生活の不便さによって深刻な問題となることが多いです。トコジラミの駆除は専門的な技術を要するため、個人で駆除するのは困難な害虫です。
被害にあったらできるだけ早く信頼できる害虫駆除業者に依頼し、適切な予防策を講じることが重要です。
日本におけるトコジラミの被害について
日本におけるトコジラミの被害は、特に2000年代に入ってから顕著に報告されるようになりました。これは、国際旅行の増加と密接に関連しているとされています。1990年代までは比較的少なかった被害が、2000年代初頭から徐々に増え始め、特に2010年代に入ると、都市部を中心にホテルや民泊施設、公共交通機関などでの被害が目立つようになりました。
国際的な交流の活発化に伴い、外国からの旅行者や留学生を通じてトコジラミが持ち込まれるケースが増えたと考えられています。また、トコジラミは一度侵入するとその場所からの駆除が非常に困難であるため、一度被害に遭うと広がりやすい特性があります。
このように、2000年代に入ってからのグローバル化の進展とともに、日本国内でもトコジラミの被害が増加傾向にあります。
新型コロナウィルス以降のトコジラミ被害状況
新型コロナウィルスの流行による旅行制限や外出禁止措置により、一時期、国際的な移動が大幅に減少しました。これにより、新たにトコジラミが持ち込まれるケースが減ったため、一時的に被害の報告が減少する傾向が見られました。またホテルや旅館など宿泊施設の利用者が減少したことも、トコジラミの被害が減る一因となりました。
しかし、2023年5月に新型コロナウィルスが5類感染症へ移行したのを機に、これまで控えられていた国内外の旅行が活発になり、人々の移動が増加しました。トコジラミの拡散は主に人の移動によって促されますので、人々の移動が増加することにより、トコジラミが宿泊施設や公共交通機関を介して新しい場所に持ち込まれるリスクが高まります。
従って2023年以降、トコジラミが拡散しやすい状況となっている可能性は大いに考えられます。
SNS
人々の移動が活発になってきたことと併せて、SNS上でトコジラミに関する様々な投稿が急増しました。
「ホテルのベッドで何かに刺されて目が覚めた。朝になってベッドの隙間からトコジラミが出てくるのを見た」というコメントと共に、自分の腕や足にできたトコジラミの刺し跡の写真の投稿
「家でトコジラミが見つかり、専門の駆除業者に依頼した。高温処理と化学薬剤を使ったが、数週間で再発。二度目の駆除でようやく解決」といった駆除方法に関する投稿
「賃貸アパートでトコジラミが発生。家主は対応を拒否しているが、どうすればいい?」といった投稿があり、他のユーザーからの法的アドバイスや同様の経験談が寄せられる投稿
「旅行から帰るたびに、スーツケースを日光にさらしてから家に入れるようにしている。トコジラミ対策にはこれが効果的!」といった予防策を共有する投稿
などなど。
新型コロナウィルスの流行以前からもトコジラミの被害はあったものの、新型コロナウィルスのパンデミックが終息に向かうにつれ、国内外の旅行が活発になり、SNS上での投稿が増加したことも相まって、改めてトコジラミ被害の実態が明らかになってきている状況と言えるでしょう。
予防
トコジラミは洋服のポケットや折り目、バッグの内側など、身の回りのアイテムにも侵入し、それを介して他の場所へ移動することがあります。
飛行機、電車、バス、タクシーなどの公共交通機関内でも発見されることがあり、これが人から人へ、場所から場所へと拡散していきます。
特にホテル、旅館などの宿泊施設は注意が必要な場所です。多くの人が出入りするため、トコジラミが持ち込まれやすく、持ち帰りやすい環境にあります。
トコジラミの侵入を防ぐために、まずは旅行先のホテルや旅館などに着いたら、ベッドや床などの隙間にトコジラミの形跡がないかどうかのチェックをしてください。そして旅行から帰宅した際は、持ち物を屋外で確認するようにすると良いでしょう。
どこにでも潜んでいる可能性のあるトコジラミ。インバウンドで過去最高の訪日外国人旅行者数を更新している昨今、とにかく外出先から害虫を持ち帰らない、家に持ち込まないよう、これまで以上に気を付けるようにしましょう。
トコジラミ関連コラム